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五郎正宗孝子伝[デジタル復元版、声色掛け合い・和洋合奏入り]

国立映画アーカイブが所蔵する澤村四郎五郎出演作2本(1本は『日蓮上人 龍乃口法難』1921年)のうち、本作は、四郎五郎が名を伏せて出演した天活作品。大阪日日新聞に連載され、当時浪曲で人気があった「五郎正宗」は、大阪の浪花座や弁天座で歌舞伎としても上演され、各社で映画化もされた。本作には天活旧派映画の吉野二郎・桂田阿彌笠・枝正義郎チームの特徴と、後に四郎五郎一座と言われる俳優たちとのコンビネーションが遺憾なく発揮されている。特に、五郎の雪中の水行シーンは、義太夫芝居となっており、歌舞伎名題役者の出演を謳った天活旧派映画の見せ場の一つ。また、後半の追っかけシーンやトリック撮影も、当時その技巧が高く評価されていた枝正義郎の撮影術と天活旧派の”活動写真”の魅力を存分に伝えるシーンである。

上映情報・弁士・音楽

上映について

『五郎正宗孝子伝』[デジタル復元版] 上映

声色掛け合い・和洋合奏特別上映(本篇72分)

国立映画アーカイブ所蔵の澤村四郎五郎コレクションの台本と照合してデジタル復元した『五郎正宗孝子伝』。旧劇映画は、上映時に、物語を“弁士”が説明し、登場人物の台詞を“声色(弁士)”が話し、お囃子や和洋合奏もつくスタイルを前提に作られている。そのため、映画の字幕は芝居の「幕」に相当する文言だけで、物語の説明や台詞がなく、上映だけでは物語がわかりにくいという問題がある。「ユネスコ「世界視聴覚遺産の日」記念特別イベント 旧劇映画の大スター 澤村四郎五郎再考 講演×『五郎正宗孝子伝』[デジタル復元版]特別上映」では、旧劇映画作品本来の魅力を理解できるように、当時の上映の再現を意図し、国立映画アーカイブ所蔵澤村四郎五郎コレクションの1926年度版台本に基づく声色掛け合いと和洋合奏での上映を行った。声色掛け合いと和洋合奏で見事によみがえった作品の情感や見世物に満ちた本作の魅力を堪能されたい。
なお、上述の台本は、NFAJデジタル展示室「第20回 澤村四郎五郎コレクション⑴」にて閲覧できる
(NFAJホームページ)https://www.nfaj.go.jp/onlineservice/digital-gallery/nfaj-digital-gallery-no-20/

弁士(声色掛け合い)

澤登翠/活動写真弁士

1972年故松田春翠に入門。弁士の第一人者として国内外の公演を通して幅広い世代に活弁の魅力を伝えている。活弁の継承者としての活動が評価され文化庁映画賞・松尾芸能賞特別賞他数々の賞を受賞。2015年『文藝春秋』に掲載の「日本を代表する女性120人」にも選出されている。2022年、デビュー50周年を迎えた。

弁士(声色掛け合い)

片岡一郎/活動写真弁士

2002年に澤登翠に入門。22か国で公演。手がけた無声映画は約350作品。行定勲監督『春の雪』、奥田民生のパンフレットDVD、「いだてん」「ブギウギ」にも出演。周防正行監督『カツベン!』では出演、指導、時代考証で参加。弁士の歴史をまとめた『活動写真弁史』を共和国より刊行。

弁士(声色掛け合い)

樗澤賢一/活動写真弁士

澤登翠門下。2020年7月、第740回無声映画鑑賞会でデビュー。無声映画鑑賞会、蛙の会発表会、新宿東口映画祭などに出演。また声優として外国映画の吹替、キネコ国際映画祭で活動している。その他に、下北沢映画祭の授賞式のMCを2021年から担当している。

音楽(和洋合奏)

湯浅ジョウイチ/作曲・編曲、三味線

1987年、東京国際映画祭でD・W・グリフィスの『國民の創生』の楽士を担当後、無声映画用音楽の復元や作・編曲等を行い、和洋楽団カラード・モノトーンを結成。作・編曲・指揮の他、ギターや三味線も演奏する。

音楽(和洋合奏)

鈴木真紀子/フルート

桐朋学園大学音楽学部卒。フルートを故峰岸壮一氏に師事。和洋楽団カラード・モノトーン主要メンバー、芹洋子アコースティックバンドメンバーとして活動。東洋英和女学院、順天堂大学交響楽団でフルート指導にあたる。

音楽(和洋合奏)

多田恵子/打楽器

洗足学園音楽大学打楽器科卒業。東京藝術大学別科邦楽囃子専攻修了。フリーランスの打楽器奏者としてオーケストラ・室内楽を中心に活動している。コンサート、オペラ、ミュージカルの他に、藤間流八世宗家 藤間勘十郎氏の演出振付による創作歌舞伎、テレビ(NHK芸能花舞台等)やラジオ、様々なジャンルのアーティストのレコーディングやCD制作等に参加。邦楽器オーケストラ日本音楽集団メンバー。

音楽(和洋合奏)

藤髙りえ子/筑前琵琶

古典や現代邦楽の演奏活動を行いながら、オリジナル作品の創作にも力を注ぐ琵琶奏者。弾き語りソロライブ、学校公演、他楽器とのアンサンブル演奏、琵琶教室での指導など幅広く活動。芝居の伴奏、書道・生け花・舞踊など他ジャンルとのコラボレーションや即興パフォーマンスも行う。NHK邦楽オーディション合格。くまもと全国邦楽コンクールにて優秀賞受賞。日本音楽集団の団員として多数の公演に参加。

関連写真

公演後の弁士・楽士のみなさん

映画詳細

映画題名
五郎正宗孝子伝[デジタル復元版、声色掛け合い・和洋合奏入り]
映画題名ヨミ
ゴロウマサムネコウシデン[デジタルフクゲンバン、コワイロカケアイ・ワヨウガッソウイリ]
製作年(西暦/和暦)
1915(大正4)年
時間(分)
72
サウンド
サイレント
カラーの種類
白黒
製作会社
天活(天然色活動寫眞株式会社東京撮影所)
公開年月日
1915年5月28日(浅草大勝館)
スタッフ
吉野二郎[監督]桂田阿彌笠[脚本]枝正義郎[撮影]
キャスト
澤村四郎五郎(刀鍛冶行光)中村吉三郎(お秋)市川莚十郎(郷士のちの舅)澤村國丸[後の小川国松](五郎)尾上英三郎(行光の義弟国光)
フィルム映写速度
12
備考
元素材は、1972年度に収集した不燃性35㎜インターネガ(フィルムストック:FUJI 72-AJ、尺長:3255.01フィート)。このインターネガは、経年劣化によるダメージの他、左右反転や画流れが生じており、編集順序も不適切な状態であった。デジタル復元ではこれらの瑕疵を除去すると共に、台本を基に編集を行っている。
関連リンク
NFAJデジタル展示室 第20回 澤村四郎五郎コレクション⑴ 『五郎正宗孝子伝(銘刀鍛冶孝子美談 五郎正宗)』脚本(1915年)
(NFAJデジタル展示室)
https://www.nfaj.go.jp/onlineservice/digital-gallery/nfaj-digital-gallery-no-20/